大根役者

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毎日毎日、稽古稽古稽古。朝から晩までひたすら稽古の日々を送っている。それもそうだ。本番は一度限り。失敗などできないのだから。ただでさえ大根役者と呼ばれている俺だが、今回の舞台だけは絶対に成功させなければならない。なぜならテレビの取材も来るからだ。こんなチャンスは滅多にない。俺はとにかく必死になって練習に明け暮れた。そしてついに舞台の本番がやって来た。舞台の幕が上がる。緊張で心臓が飛び出しそうになるが、それをなんとか耐えていると、ついに俺の登場場面になった。
「待てい。そこの者。お主、通行許可証を持っておるのか」
「よっ!!大根役者!!待ってました!!」
「きたきたー!!大根役者」
ヤジが飛んでくる。会場は笑っている。くそう、何が大根役者だ。皆、俺の事を馬鹿にしやがって……。演劇が終わり、ふと鏡の前に立った。俺の顔は酷くやつれていた。そして思い出した。
「ああ、そうだ。俺の顔、大根だったわ」
公開:22/10/06 10:04

富本アキユ( 日本 )

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・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
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