いのる犬

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教会に祈りを捧げる犬が現れたという。だれもが奇跡の到来を信じた。
記者が取材に行くと、その犬は二本足で立ち、前足を合わせると「くーん」と「わおーん」の境目のような鳴き声を上げた。
牧師が記者に訴える。
「ほら、いまアーメンと祈ったでしょう。これこそ、神の使いである証拠です」
「うーん」と記者は首を傾げた。そう聞こうとすれば聞けなくもないが、かなり無理がある。
それでも信者が必死に訴えるので、記者は簡単にまとめて記事にした。
信じたい人にはそう聞こえるのだろう。「イワシの頭も信心から」と言うからな。
鰯頭教団の信者である記者は、そう思って、ひとりでうなずいた。
SF
公開:22/10/05 13:50

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