成仏(前編)雑貨店シリーズ

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背中に寒気を感じて、振り返ると、「ワッ!」
体が透けているお婆さんがいました。頭から血が流れています。
「透明になれる薬あるかしら。中途半端に見えると、今みたいに驚かせてしまうから」
「他に良い方法があります」
「どんな?」
「成仏するんです」
「……散歩の途中に突然、車に撥ねられちゃって。一人暮らしだったから」
「やって置きたい事が?」
「少しね」
「私が代わりに」
「頼める」
「はい」
お婆さんの案内で、住んでいたアパートへ行きました。
ポストの裏に隠してある鍵で中に入り。
少々散らかった部屋を片付け、掃除機をかけました。それから、洗濯物を取り込んで畳み、草花に水をやり。外猫の為に、水と餌を皿に入れました。
「ありがとう」
「いいえ」
「あっ、冷蔵庫に麦茶があるのよ」
私が麦茶をコップに注いでいる間に、お婆さんの姿は消えていました。
ああ……成仏されたんですね。
良かった……。
ファンタジー
公開:22/10/05 11:49
更新:22/10/06 15:16

杉本とらを( 東京 )

言葉遊びが好きで、褒めらると伸びるタイプです。
良かったら読んでやって下さい!

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