比喩を許さない。

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 比喩を許さない。
 あなたは私をいつも褒めてくれたけど、まるでバラのようだとか、夕日の沈む時のようだとか、私を何かに例えることしかしなかった。あなたの言ってくれたことは、全部覚えているの。
 つまり、一度も可愛いとか、美しいと言ったことがないってことを。
 
 切り出す別れにはどんな修飾も必要ない。
 いつでも遠回しにしてるから、あなたはいま口籠っているのよ。別れたくないとか、別れようとか、どっちかでも言えばいいのに、その曖昧な笑み!
 そんな誤魔化すような顔をして。あなたの言葉は結局、自分を守る盾だったの。これ以上、最後に何をどう言おうかなんて考え込んでいるなら、もう出て行くわ。
 ……今まであなたのことをどう思ってたのかって?
 あなたとの会話はいつも壁越しにしているようだった。
 よくわかってないって顔しないでよ。そういうことが嫌いだったの。
 さようなら、わたしの迷路みたいな人。
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公開:22/10/01 21:50
更新:22/10/01 21:53

やまめといろ

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