息子

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息子をなくした母親が、
すべてを捧げて息子を創る。

思い出を入れた。
大地を入れた。空を入れた。
どんぐりを入れた。

さわやかな春の木漏れ日も、
熱を含んだ夏風も、
寂しい秋の夕暮れも、
寒空に輝くオリオンも。

すべてを入れた。

太陽を入れた。月を入れた。
可愛がっていた人形を入れた。
砂漠を入れた。海を入れた。

それでも足りない。

新緑を入れた。砂糖をまぶした。
恐竜を入れた。涙を入れた。
温かいミルクを入れた。

それでも足りない。
それでもまだまだ足りないーー。

それらすべてを合わせても、息子の存在には、
ーーーー到底敵わなかった。
ファンタジー
公開:22/09/27 17:49
更新:22/09/28 12:24

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