0
1

 夏が置き忘れた光の残滓。石榴が散らした鮮やかな斑点のように、脹脛の模様を波打ち際の砂浜のごとく変えていく。
 歓迎されざる縞蚊の囁きに、古の暗く湿った穴倉の微かに滲む硝煙の匂いと腰まで手繰った固い布団の感触は、まざまざと僕の四肢を固くする。
 おずおずと頁を捲る右手は、次に訪れる拙い肉欲を抑えきれずに慄き、やがて耳元に縞蚊の羽を揺する低音を聞けば丘の向こうでちろちろと頭を出す業火の熱さに目を閉じる。罪悪感と背徳の美しい香りは硝煙の尖った香りと鬩ぎ合う。我思う故に我あり。
 嗚呼手繰り寄せる頁の、面映ゆい肌色の白さよ。布団の固さを相殺する塵紙束の嫋やかさよ。小さき羽の産む低い不安は地平線の彼方へ消え、右手を構え己の迎撃態勢のまま速射訓練をく、繰り返す。
 汝、こ、この素晴らしき世界に平和を、もももも齎し給え――!
青春
公開:22/09/27 09:59
更新:22/09/27 21:22
男子中学生 青春 パロディ

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容