マッチ売りの僧侶

「マッチはいりませんか？」
街中でマッチを売っているのは、少女ではなく僧侶だった。この奇妙な光景を皆が怪奇な目で見ながら歩いて通り過ぎていく。
「あのー、どうしてマッチ売ってるんですか？」
そこに現れた好奇心旺盛な若い青年が僧侶に話しかけた。
「説法をするためですよ」
「マッチで？」
「はい」
そう言うと僧侶は、マッチに火を点けた。
「短くまとめますと、要するに人には親切にして下さい。自分に必ず良い事が返ってきます」
そう言い終えると、マッチの炎は消えてしまった。
「えっ？」
「マッチの炎が消えるまでの間に説法するんです。最近の人は、長い話を嫌うでしょう？」
「確かに……。短くて良いね。他にもあるの？」
そう言うと、僧侶はマッチに火を点けた。
「要するに、嘘つきは地獄に落ちるんです。だから正直に生きなさい」
そしてマッチの炎は消えた。
「あはは。面白れえ。もっと聞かせてよ」
大成功だ。