耳に委ねて

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雪がしとしとと降りつく庭。
窓の外の雪を眺め、私はどのくらい積もるのだろうかとぼんやり考えた。
暖炉の火がパチパチと鳴る。ロッキングチェアに腰掛け、昨日に続きアガサクリスティーを読み進めた。
ひとしきり読んだところで私は立ち上がり、壁の標本を眺めた。その標本には生き物ではなく、脱皮したかのような人間の耳が入っていた。
これは私が数十年かけて世界中から集めたものであった。この耳を自身の耳に被せるとそれぞれ耳が記憶している音が聞こえた。例えばこの耳からはバザールでごった返す音が聞こえる。これはバザールに出店している店主から譲ってもらった。他にもざあざあと激しい滝の音、かこーんと木を斧で切っていく音など数多く持っていた。
「さて、今日は誰の耳を借りようか」
私は一つずつ丁寧に標本から耳を取り出し、腰掛け、音に身を委ねた。それは私のお気に入りの時間だった。
ファンタジー
公開:22/09/24 22:54
更新:22/09/25 10:44

リマウチ

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