スター選手

6
2

活気がないボクシング界にはスター選手が必要ということで、ある若手がスカウトされた。
そのルックスの良さから王子と呼ばれてしばらく人気をほしいままにしていたが…。

次の対戦相手は野獣。かつて余裕で勝ったので今回も、と思ったらボコボコにされてしまう。
体は絶好調なのにと王子は首をひねった。
スポンサーに敗因を尋ねてみると鼻で笑われた。
「おまえ自分が強いと本気で思ってたのか? 今までの試合は全部八百長。金を出して負けてもらってたの。興行収入は稼げたが…潮時だな」

翌日のスポーツ新聞の見出しは「野獣リベンジ! 王子1RでKO負け」。世間は大騒ぎだ。
王子は引退、野獣はチャンピオンになった。

知り合いがスポンサーに尋ねた。
「じゃあ…王子って必要あったんですかね?」
「わかんねえかな。一度強い者に負けて這い上がるっていう設定の方が盛り上がるだろ」
本当のスターは最初から野獣だったのだ。
その他
公開:22/09/24 20:11
更新:22/09/24 20:15

ナユセナユ

どんでん返しが好き。ちょっとずつ書いていきたいです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容