商売上手

4
1

 その店の壁には『空中散歩できるウィッグ 格安販売中』と書かれた横断幕がかかっている。
 ドアを押し開けると、親しみやすそうな店員が会釈してきた。
「空中散歩できるウィッグが欲しいんですけど」
 店員は奥の部屋からウィッグを持ってきた。
「こちらです」
 私はストレートヘアのウィッグを手に取る。店員がウィッグの裏側を指差した。
「このピンで地毛に留めると、体が浮いて数秒で2階の屋根くらいの高さになります。降りる時は髪をウェーブにしてください。ウィッグを外して地毛になると急降下します」
 私は首をかしげる。
「ウェーブにするって、空中で三つ編みでもするんですか」
 店員はしたり顔だ。
「まあ、それも良いですが面倒ですよね。皆さま、ウェーブのウィッグを購入されてストレートの下に装着されていますよ」
 差し出されたチラシに書かれたウェーブのウィッグの値段は、ストレートの5倍の値段がついていた。
ファンタジー
公開:22/09/30 17:00
更新:22/09/26 13:17

志雨

2021年3月に小説を初めて完成させました。いろいろなジャンルのショートショートを書いていきたいと思います。
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容