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「はあい!いらっしゃい!」
早朝、呼び込みの声の方へ行くと、もんぺ姿の女性が火吹き竹で竈の火を熾し、平安貴族が牛車に乗り込み、奴頭の丁稚が商家の前を箒で掃いていた。
更に、腰に手を当て牛乳を飲む親子の前を、新聞配達の少年と、食パンを咥えた女子高生が走っていく。
時代は違えど、どれも朝の風景だ。
そう、ここは様々な"朝”を売る"市”。だから"朝市”と呼ばれている。
だが、このままでは買い物は出来ない。私は丁稚がいた商家に入ると、手代に百円玉を差し出した。ここだけは売り物ではなく、客の為の両替商なのだ。
しかしどれも安い。"早起きは三文の徳”とはこの事だ。
私はその三文で、前から気になっていた"朝”を買う事にした。

「遅刻遅刻!行ってきまーす!」
「気をつけて行きなさいよー!」
私は高校生になったばかりの娘を見送った。
それにしても、横で同じ様に食パンを咥えて走っている子は、どこの誰だろう?
ファンタジー
公開:22/05/13 17:42
更新:22/05/13 17:47

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