あの時、約束しただろ?

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ずっと死にたかった。
ずっと死のうと思ってた。
お世辞でも"君は恵まれてるよ"とは言われないようなそんな27年間。
くだらないミスで仕事をクビになり、親からの嫌がらせはエスカレート、親友と呼べるやつとはもう5年は会ってない。
8月の茹だる暑さに舌打ちをしながら屋上のフェンスを乗り越える。気持ちの良い風が諌めるように僕を撫でる。
世間は夏休みだというのにスーツ姿がチラホラと忙しなく道を歩くのが見える。白いワイシャツが嫌に目立ってしょうがない。

少し悩んだけどやはり落ちる時は地面を背中にしたい。雄大な空に抱かれるような、せめてもの幸福を最期に。

ゆっくりと重心を背中に置く。

フェンスから指が離れる。

ふわり

なるほど、悪くない。

しばらくしてふと視界に映ったものに一瞬目を見開く。

そろそろかなって思ってさ。

馬鹿な奴だよ、お前。

恵まれてたね。

ああ。
その他
公開:22/05/13 14:56

ねことまと( 日本 )

大量のインプットを受けた後のアウトプット用
ショートショートとは言えないような短い物語を書いてしまっています。

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