風が運んできたもの

私は獏。夢を食べる生物である。
以前は日本という国に住んでいたがあの国は今、大人も子供も夢を見なくなってしまった。
もので溢れ、SNSを使えば何でも手軽に手に入る社会に現実主義者が増えてしまった。
夢を語れば鼻で笑われ、ため息を吐いては夢を諦める。ここにいては食いっ逸れてしまう。そう感じ、吐息で空へと吹き飛ばされるとそのまま風に乗り、夢を持つ人間の多い場所を探し運ばれ続ける。
そうして訪れたのがとある発展途上国。大人に混じって子供が働く国だ。
ここは大人も子供も大きな夢を持っている。特に子供の夢は素晴らしい！身近なものでは学校で皆と勉強する事が夢だと語る。
私はその夢を叶えた。夜、寝ている子供達の意識を集めては学校を開く。睡眠学習という奴だ。ここで読み書きと簡単な計算くらいは教えてあげよう。
夢が膨らむ子供達を見て私はお腹が膨らむ。
犯罪に手を染める悪夢の未来も私は食い尽くしているからね。