風が運んできたもの

吸血鬼の祖母が寿命で亡くなった。
『私が死んだら、この体を太陽に晒し、灰にして海へと流して頂戴』
生前そう話していた祖母の遺言に従い、遺体は太陽の下へと晒す。
祖母の体は火葬するまでもなく灰へとその姿を変えていく。その様子を親族皆で見守った。
海へとやってくると「これでお別れだね…」と誰かが呟いた。
吸血鬼は死なないと思っていた。死なない生物なんていない。祖母の死を目の当たりにして、私達はそれを思い知った。
灰を海へと向ける。が、私達はすっかり忘れていた。
そう言えば吸血鬼って海を渡れないんだった！
海に嫌われた祖母の遺灰は海風に運ばれ、反対側にある山へと飛ばされていく。
その様子を親族皆で呆然と見つめた。
「あっ！」
驚きの声と共に伯父が山の一部を指さす。
ポン！と桜の花が咲いた。
それを皮切りにポポポポン！と山の桜が満開になっていく。
花咲か爺さんかよ…と誰もが思った。