風が運んできたもの

私の住む村は山奥のド田舎だ。風力発電の為の大きな風車が目印であとは田んぼと畑ばかり。
信号機はないし携帯電話は誰も持っていない。買物は小さな商店で全部済ませる。
そんなド田舎オブド田舎に人魚の一家が引っ越してきた。
驚いた。人魚は水中を泳ぐものとばかり思っていたが引っ越してきた人魚は空を泳いでいる。空中をぷかぷかと浮いている。
聞けば父方の血筋に鯉のぼりがいるようでそれで空を泳げるようになったとか。
その説明に世界って広いなぁ…と感じた。都会では常識なんだろうか？
そう聞くと首を横に振る。むしろ都会では「人魚は水の中にいるものだ！」と勝手な常識を押し付けられていたそうだ。
そんな都会の水が合わなくて空気の美味しいこの田舎に引っ越してきたと話す。
人魚は今日も風車の風を浴び、ここに運ばれてきて良かったと嬉しそうに笑う。
アットホームなこの村は風当たりも強くないのできっと静かに暮らせるはずだ。