風が運んできたもの
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高齢の祖母が「潮の香りがする」と呟いた。
ここは山間の田舎。潮の香りなんて絶対にしない。
そう言えば、祖母は海に近い村からこの山間の田舎に嫁いできたんだっけ…もしかしたら、記憶が潮の香りを届けてくれたのかも。
「違うよ。私の故郷ではね、潮の香りがするとお迎えが来るって言われていたんだ。潮の香りのする尾長鳥。死尾風って呼ばれる鳥が死を運んでくるんだ。そうかい…私も向こうに行く時が来たようだね…」
祖母は優しく微笑み、そっと目を閉じる。
祖母はその日、眠るように息を引き取った。
葬儀の日、私はふと空を見上げた。
風の中に幽かに潮の香りを感じたから。
びゅぅっ!と強い風が吹いた。
潮の香りと共に真っ黒な美しい鳥が長い尾を揺らし、空へと飛んで行く。
不思議と恐怖は感じなかった。優しい潮の香りはきっと祖母をあの雲海へと連れて行ってくれる事だろう。
木々が揺れる音はまるでさざ波。私は海を感じていた。
ここは山間の田舎。潮の香りなんて絶対にしない。
そう言えば、祖母は海に近い村からこの山間の田舎に嫁いできたんだっけ…もしかしたら、記憶が潮の香りを届けてくれたのかも。
「違うよ。私の故郷ではね、潮の香りがするとお迎えが来るって言われていたんだ。潮の香りのする尾長鳥。死尾風って呼ばれる鳥が死を運んでくるんだ。そうかい…私も向こうに行く時が来たようだね…」
祖母は優しく微笑み、そっと目を閉じる。
祖母はその日、眠るように息を引き取った。
葬儀の日、私はふと空を見上げた。
風の中に幽かに潮の香りを感じたから。
びゅぅっ!と強い風が吹いた。
潮の香りと共に真っ黒な美しい鳥が長い尾を揺らし、空へと飛んで行く。
不思議と恐怖は感じなかった。優しい潮の香りはきっと祖母をあの雲海へと連れて行ってくれる事だろう。
木々が揺れる音はまるでさざ波。私は海を感じていた。
公開:22/05/07 20:18
元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。
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