風が運んできたもの

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小学校からの帰り道、風に運ばれコロコロとみかんが目の前を転がってきた。
それを拾い上げると目の前に祖母が立っていた。
「拾ってくれたの?ありがとねぇ。そうだ!美味しいお菓子があるから家に寄ってきなさい」
祖母は矢継ぎ早にそう言うと私の手を取り歩きだした。祖母の家ってこっちだったかな?
疑問に首を傾げると、被っていた帽子が風に飛ばされてしまった。
「あっ!」と声を上げ、祖母から手を離すと帽子を追って走り出す。
大人の人が風に飛ばされる私の帽子をキャッチしてくれた。
「あら?恵、こんな所でどうしたの?」
大人の人は母だった。
「あっ!お母さん。さっきそこでお婆ちゃんに会ってね、美味しいお菓子があるから家に来ないかって言われたの」
母は私の肩を優しく抱いた。
「恵、よく聞きなさい。お婆ちゃんね、もう死んじゃったの」
もしあの時、風に帽子を運ばれていなかったら私はどこに連れて行かれていたのだろう?
ホラー
公開:22/05/06 20:30

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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