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息子が仏壇にカーネーションを備える姿を見て、少し寂しくなる。
私は彼の本当の母親ではない。彼の実母は5年前に亡くなっている。私は去年、彼の父と結婚した。
勿論、彼の事は本当の息子のように愛している。だけど、どうしても壁を感じてしまう。私達の間には目に見えない隔たりがある。

その日の夕方、息子が私をじっと見つめてくる。
どうしたんだろう?こちらも見つめ返すと、彼は深呼吸を一つすると意を決したように私にカーネーションを差し出してきた。
「今日…母の日だから…」
凄く嬉しい。涙が出そうになる。
「あと、本当の母親じゃないからって気を使わなくていいから。母さんはもう、僕にとって本物の母親なんだから」
彼のその一言で私達の隔たりはなくなったように感じた。
ううん…もしかしたらそんなものは最初からなくて、私が勝手に壁を感じていただけかもしれない。
でももう大丈夫。だって私は本物の母親なんだから。
公開:22/05/08 20:35

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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