あの時の音色

今から２０年程前、携帯電話はあったがスマホはなかった。携帯にカメラすらついていなかった。今時の若者では考えられないだろう。
当時は着メロというものが流行っていて、皆が携帯の着信音に好きな音楽をセットしていた。
主流は１６和音。声の入っていない３０秒程の音楽。今考えればチープな音質だったが当時はそれで一喜一憂していたものだ。
中には自分で着メロを作る者もいた。ボーカロイドより先に生まれたプロデューサー。
私は今もそんな自作の着メロを毎日聞く。
彼が私の為に作ってくれた、あの時の音色。何気なく口遊んでいた鼻歌。それを彼が着メロにしてくれた。
始めて聞いた時は驚いた。私の単音の鼻歌を彼が１５もの和音で色付けしてくれたのだ。
そんな着メロは今でも私達の宝物だ。
今、その着メロを最も愛しているのは生まれたばかりの私達の赤ちゃん。
子守歌代わりに流す着メロに、愛しの我が子は今日も笑顔を浮かべてくれる。