風が運んできたもの

彼氏にフラれ、公園のベンチで一人泣いていると小さな子供が声をかけてきた。
「どうしたの？どこか痛いの？」
首を縦に振る。心が痛い。何もかも忘れたい。
「じゃあこれあげる」
シャボン玉セットを渡された。
「それに忘れたい事を吹き込んで飛ばせば、嫌な記憶は風が運んでくれるよ」
そんな事あるわけない…と思いつつもシャボン玉に息を吹き込む。彼氏の記憶を流し込む。
シャボン玉がふわりと浮かび、風に流される。
私は何で泣いていたんだろう？何か辛い事があったけど思い出せない…
「嫌な記憶が風に運ばれたからだよ」
そうなのか。ありがとう。君のおかげでスッキリしたよ。あ～あ、君みたいなしっかりした子が私の子供だったらなぁ…
「嫌だよ。僕を捨てた親の所になんか戻るものか。嫌な事思い出させないでよ」
その子が私にシャボン玉を吹きかけた。
風に運ばれてきたそれは私の鼻先で割れると私の忘れた悪い記憶を思い出させた。