風が運んできたもの

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京都を訪れた旅人に声をかける。ガイドのご入用はないですか?と。
多くの旅人はガイドブックを見せては「大丈夫です」と笑ってみせる。素人め。旅の達人なら私の胸に輝く『京都ソムリエ』の証に目をやるはずだ。
京都の町は碁盤の目。ガイドブックはもとより、高い戦略性を持って挑まなくてはいけない。
そうしないと旅慣れた棋士に先手を打たれてしまう。予定通りにいかず後悔の残る旅になるだろう。
そうならないよう私がいる。
私を頼る旅人は印をつけたガイドブックを見せてくる。ふむ…中々いい打ち筋だ。私のおすすめの店も多い。
だけどこの石の置き方は悪手だ。この時間・この流れはどの店も混みやすい。
私のアドバイスに肩を落とす旅人。なぁに、ここからが京都ソムリエの腕の見せ所だ。
その石を布石へと変えてみせる。布が風に流されるかのごとく、私は碁盤の目に新たな石を運ぶ。
路地を流れる京都の風に身を任せるよう旅人を案内した。
公開:22/05/05 20:24

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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