居住の自由

12
3

歩いていると違和感に気がついたが、その正体がわからない。
あたりを見回した。えっ!? お天気がよい昼過ぎ。影がない人がいる。いやいや人だけじゃなく、影がない家だってある。
耳を澄ますとかすかに影の声が聞こえた。
「やっと自由になれた。僕の本体は悪い奴だったからね。あんなのと道連れにされちゃたまらないよ」
「私の本体もたいしたことないけれど優秀な本体が現れるまではとりあえず居住してるの」
急に暗くなったと思ったら私の上を家型の影が通りすぎた。
「やっとあの家から解放されたよ。最悪の家だ。家族仲が悪くてさ。息がつまりそうだった」

私は慌てて自分の影を探した。
あ~よかった。とりあえずは影は居住してくれている。影に逃げられないようにしなきゃ。緊張の毎日だわ。

影に居住の自由を与えると、真実が見えすぎて怖い。

角を曲がるとのおしどり夫婦に選ばれた俳優の家だ。
あっ!影が…ない。
その他
公開:22/05/05 14:17

風薫

第二の人生の趣味探しをしています。
老後、寝たきりになってもできる趣味探しをして、超ショートショートに出会いました(笑)(泣)
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容