ペンの冒険

1
3

 油性ペンが、毎日、決まった時間にいなくなる。
 ペン立てに必ず戻してるのに、見当たらない。そうしたら、いた。机の下とか本棚の隙間、隠れて部屋中あちこち移動してるのだ。見ないふりをすると、きっかり一時間で、澄ましてペン立てに戻ってる。
 だいたい昼は会社だし休日、たまたま、一時間の間に油性ペンを使うなんてなさそう。
 と放置してたら今朝、目が覚めたら、顔に、手足に、からだじゅう、びっしり黒い線が引かれてて、洗っても取れないというか会社に間に合わない。線は床から玄関まで続いてて、ドアを、見ている前でペンが、まっすぐ昇っていく。
 一番上まで達した。はさみを入れた模造紙みたいに、ドアが真ん中からぺろりと捲れる。外はジャングルで、鬱蒼と生い茂る木々の見たことない世界、甲高い鳥の鳴き声、むっとする熱気と冒険の匂いがどっと部屋に押し寄せる。
 蓋を見つけてペンを取る。
 そういえば今日、祝日だった。
その他
公開:22/05/05 21:00

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容