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夕焼け空の坂の頂上で開いた足の間から逆さまに街を覗けば、そこに怪獣が見える。友達が教えてくれた。
怪獣は火を噴き家を踏み潰し鉄塔を折り曲げる。空も街も茜色で怪獣だけが真っ黒な影法師だった。僕らは空が焼けるとここに来て街が焼けるのを眺めた。
ある日、いつものように世界が壊れるのを見ていたら怪獣の動きが止まってしまった。見渡す限り、もう壊せるものがどこにもなかった。
僕の股ぐらに頭を突っ込んだ友達が「終わったね」と言うとそのまま足の間をくぐり抜けた。僕に手を振って焼け野原に立つ怪獣に向かって坂を駆け下りて行く。
慌てて体を起こし振り返っても、そこには微かに夕焼けの名残りを西の空にとどめる黄昏時の街が広がるだけ。それから何度試しても怪獣のいる風景は見えなくて、あの子にも会えなかった。
あの子はどこへ行ったんだろう。まるで兄弟みたいな僕の友達。とても大事な友達だったのに今はもう顔も思い出せない。
ファンタジー
公開:22/05/01 15:55

界岸線のひつじ(たそがれる猫の城)

猫だったりひつじだったり。
猫の踵<猫の森を<たそがれる猫の城<nemoノコヲリ<界岸線のひつじ

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