ほたる

4
3

「蛍狩りに行こう」
 友達にそう言われてもボクは気が進まなかった。

 ──蛍は人の身体から抜け出した魂なんだよ。
 ──だから墓場やその近くの川によく飛んでいるんだ。

 そんな事をばあちゃんに言われた事があるからだろう。ボクは断った。
 しかし弟がどうしても行きたいという。仕方なしに「見るだけだぞ。捕まえちゃダメだからな」といい、蛍狩りならぬ蛍見に行った。
 川の蛍は妖しく、美しかった。
 帰り道、弟の薄手のパーカーのポケットが淡く光っているのに気がついた。
 あれほど言ったのに、こっそり捕まえていたようだ。
 ボクは約束をやぶるならもう一緒に遊ばないといい、弟に蛍を放させた。

 弟はむくれたが、約束は約束だ。

 帰宅すると、夕ご飯の用意が出来ていた。
 ボクらの気配に気がついたのか、ちゃぶ台の側で寝ていたじいちゃんがパチリと目をあけてボクに言った。

 ──さっきは助かったわ。
その他
公開:22/04/29 23:18

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
https://note.com/nekometubaki



 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容