風が運んできたもの

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神保町を散歩していると、どこからかカレーのニオイが漂ってきた。スパイスのいい香りだ。
ぐ~っとお腹が鳴る。これも何かの縁だな。風が運んできたそのニオイに誘われるがまま私は足を進めた。
すると今度はどこからか拉麺のニオイが漂ってきた。焼き肉とはまた違う、チャーシューの肉々しい香りに口内が涎で溢れる。
風が運んできた二つの香り。私はどっちを選ぶべきだ?どっちを食べるべきだ?
悩む私に風はさらなるニオイを運んでくれる。真後ろに佇む古風な喫茶店。そこから珈琲の香りがする。
それは拉麺やカレーほど強い主張はしない。だが、その香りが私の心を掴んだ。
何せ私は今日、この街でインクの匂いが香しく芳しい古書を手に入れた。
この本との出会いも風によってもたらされたものだ。
私は喫茶店に入ると軽食を注文し、静かに読書を楽しむ。
この店にして正解だった。
腹は八分目だが、読書家として心は満腹になりつつある。
公開:22/05/02 20:26

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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