風が運んできたもの

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大きな川の向こう岸に妻と子がいる。二人は俺の姿を見て涙する。俺も同じだ。二人の姿を目にし、何故向こう岸に渡れないんだ。何故唐突に川を挟んだ向こう側とこちら側で戦争が起こり、分断されてしまったんだと涙する。
お互いの姿は確認出来る。だが会えない。橋は落とされ、泳いで行こうとすれば川見張りの兵士から撃たれてしまう。
近くて遠い…その現実に今日も俺は涙する。
そんな俺の頬をふわりと何かが触れた。見るとそれは桜の花びらだった。こちらも向こうも満開の桜が散り始めている。
風に運ばれた桜の花びらが俺と妻子を繋ぐかの如く、花筏を作り始めた。
俺は花筏に足を乗せた。それは沈む事無く俺を支えてくれる。
俺は風にを押され、桜色の絨毯を走り出した。背後から兵士の声がする。銃を構える気配がする。
しかし銃声は鳴らない。振り向けば、桜吹雪に銃を取られる兵士達。
その隙に俺は川を渡り切り、ついに家族と再会を果たした。
公開:22/05/02 20:24

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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