上を向いて歩いていたら

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「この前だ。上を向いて歩いていたら、小さな段差につまずいちゃって。ほら、見ろよこの怪我」
男はN氏にむかって両腕を出した。包帯が巻かれている。
「大丈夫か?」
「ああ大丈夫だけどさ、ひとつお前に言いたいことがあってよ」
「何だ?」
「俺は思うんだけどよ、あの歌が悪いよな」
「あの歌?ああわかった」
N氏はかの有名な曲を思い出した。頭の中でメロディが流れる。
「もしだ、もし仮に下を向いて歩こうって歌ってくれてたらよ、俺は怪我をしなかったぜ?」
「そうかもしれない」
N氏は笑って言う。
「だろ?そうだ、俺がそんな歌を作って、売り出してやろうか」
男は調子に乗ってフンフンと歌い出す。
「ははやめておけ。どうせ売り上げも下向きだ」
その他
公開:22/04/27 22:13

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