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過ちを犯してしまった。
対面に座る店長さんは、冷ややかに薄く目をあけている。
「なんであんなことをしたの」
魔が差してしまって、とかすれる声で言った。

そう、魔が差したのだ。
私はたかだか数百円惜しさにしてはいけないことをした。
数分前のことを思いだす。
私は、セルフレジでパートの方に、自らの過ちを白状したのだった。
許してもらえるかもしれない。淡い期待を抱いていた。
女性は、眉間にしわを寄せたのち、店長を呼んできます、と私に告げた。
身が縮まる思いだった。

私は伏せていた目線をあげる。
店長さんは、机の上にスッと釦を置いた。
「これがね、出てきたんですよ」
出てきた、と反芻して私はなんのことか理解した。
恐らく、袋の中に紛れ込んでいたに違いない。
「困るんですよ、キャッシャーに大量の小銭を入れられると詰まるんです」
私は、銀行で手数料を払って両替をすることを心の中で誓った。
その他
公開:22/04/29 17:55

ねむざらし

ねむてっいる、あざらしです。
ねむざらし。

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