メモリーゴーランド

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都内にある遊園地の閉園に伴い日本最古のメリーゴーランドもお役御免となり、倉庫に保管されることとなった。
ある夜、倉庫に一筋の稲光が走り、雷が落ちて倉庫は破壊されたが、不思議なことにメリーゴーランドは無傷だった。

数年が経ち、メンテナンスの済んだメリーゴーランドは、ある地方のテーマパークで復活することになった。
木馬がゆっくりと動きだし、回転し始めた。木馬に乗った人たちはみんな周りの景色を楽しんでいるというよりは、懐かしい景色を眺めるような表情で、中には涙ぐんでいる人もいる。
乗り終えたあと、人びとは口を揃えて「メリーゴーランドが回り始めると、周りの景色が一変し、昔見たことのある思い出の光景が流れていった」と言う。
それはあたかも亡くなる瞬間に見るという走馬灯のようで、なんだか温かい気持ちになったという。

それ以来、このメリーゴーランドは「メモリーゴーランド」と呼ばれ、末長く親しまれた。
青春
公開:22/04/29 07:01
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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