タ（ケノ）コ

春、父と山に入る。高齢の父だが山に慣れている為か、足腰はしっかりしている。
逆に私は何度も転びそうになる。山に慣れていない証拠だ。
父が指差す場所を鍬で掘り返す。土中のタ（ケノ）コツボを割らないよう、慎重に鍬を入れる。
掘り起こしたタ（ケノ）コツボを見ると中に立派なタ（ケノ）コが入っていた。
引っ張り出し、根っこである固い足を８本切り落とす。タコと違い、タ（ケノ）コは足を食べない。食べるのはもっぱらイカのように尖った頭の部分である。
『今年は雨が少なく、土が固くて地中が泳ぎ辛い状態にあるからタ（ケノ）コは不漁だ』と聞いていたのに父は毎日タ（ケノ）コを捕まえる。
さすが長年タケノコを掘っていただけの事はある。タ（ケノ）コ掘りもお手の物だ。
だが調理は苦手なようだ。生き物でもあるタ（ケノ）コを捌くのが苦手な父。私が刺身にして出すと喜んでくれる。
ちなみに私のおすすめはタ（ケノ）コ焼きである。