野菜の背景

ある日、次郎君はネットで野菜を注文した。
届いた野菜の説明書には「トレーサビリティ（見える化）が万全の野菜です」とある。

彼はシイタケを煮て食べてみた。すると・・。
眠くなった頭の中に、ゆるキャラのようなキノコが現れて、
「やぁ、僕はシイタケの精だよ。静岡の伊豆の農家、佐藤さんが栽培方法にこだわって育ててくれたんだ」としゃべり出した！

目が覚めた次郎君が、説明書の農家に問い合わせると、農家の人は言う。
「植物は心をこめて育てると、育てた人の心を読む、と言います。私たちは自分達の事を話し聞かせながら、野菜を育てています」

何かアヤシイなあ、と思ったが、その人は続ける。
「野菜を食べるとその気持ちを食べた方が共有できて、野菜にすりこまれた話が聞けるんです」

ちょっと眉ツバだが、野菜が自分で教える「見える化」、いや「聞ける化」なら、わかりやすいな。
彼はそう思い、また野菜鍋を作りだした。