文豪チヨコ令糖

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「こんにちは。酒屋です。御用聞きに伺いました」
「ああ。君か。締め切りが明日でな……今回、酒はいらないよ」
「残念。では旦那にピッタリの菓子を! 『文豪チヨコ令糖』」
「文豪チヨコ」
「いいですよぉ。効きますよぉ。ただし、一日一枚までですからね。絶対ですよ!  とりあえず一週間分七枚置いていきますんでご健筆を!」

 作家はチヨコ令糖の銀の包みを剥がし、一口──。
 それから後の事は覚えていないが、夢中で食べて書いたようだ。一夜にして原稿が仕上がり、しかも傑作と言っていい出来だ。
 気になるのは七つの破り捨てられた包み紙。あれだけ一日一枚と念を押されたのに……。

 ──ピンポン。
「どうも。酒屋です。ボールペン忘れちゃったみたいで……」
「すまん! チヨコ令糖の事だが……」
「ええっ! 一日で全部召し上がったんですか?」
「私は一体どうなるのだろう……?」

「ニキビ出来ちゃいますよ」
その他
公開:22/04/24 07:06

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
◆Twitter:@ayaka_nyaa5

◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
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