超次元ASMR

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僕は、寝る時にASMRの音声作品を聞くのが日課だった。
イヤホンを付け、新しく買った音声作品を起動し、枕に頭を預ける。
お気に入りの声優が収録したその音声作品からは、僕が寝るためだけに作られた音声が流れてくる。
その安心感に身を任せ、眠りにつこうとしたその時。何やら煙りくさい、火薬のような臭いが鼻腔を突いた。驚いて眼を開くと、僕の眼前には燃え盛る部屋が映っていた。
鉄の弾ける音。頬に感じる熱気。何かが焼ける生臭いにおい。眼前いっぱいに広がる灼熱の炎。
困惑しているうちに、どんどん火は部屋中へ広がっていく。
必死に抵抗するも、体は動かない。
僕はいよいよ死を覚悟した―――

次の瞬間。僕はいつもの部屋に居た。
驚いてスマホの画面を見ると、そこには件の音声作品のタイトルが書いてあった。
『体験型ASMR~幼馴染との日常から自宅が燃えるまで~』
今度から声優買いはしない、と心に決めた僕だった。
その他
公開:22/04/23 19:41

一色

自己満足兼、備忘録的にショートショートを投稿します。Twitter(@issiki_1205)

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