ココの呱呱

　真夜中に「あぅ～、あぅ～」と突然甲高い声が隣室から。
僕と妻は深い眠りから呼び起こされる。
心臓が高鳴る。ベッドから飛び起き居間へ。
　やはり息をしていない。手足は硬直。目は見開いたまま。

「ココちゃん、ココちゃん」と妻は叫ぶ。
「ココちゃん、ココちゃん」と体をさすりながら
　僕も叫ぶ。
今夜はなかなか戻ってこない。
今夜が最期か？
　
　ピクリと僅かに前足が動く。呼吸が始まる。
垂れ下がって乾いていた舌も動き出す。
やがて尻尾を振りだす。よろよろと立ち上がる。
生き返れたことを喜ぶように「ワン」と吠える。

　いつものてんかん発作。
もう何度死にかけ何度生き返ったことか。

　あの鳴き声はまさしくココの呱呱か？
　ココは２０才に近い老犬チワワ。

不図思う、私の最期に呼び掛けてくれる人がいるだろうか。生きているなら妻の最期は僕が呼びかける。
「戻っておいで、もう少し一緒にいよう！」