最強のプロット

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「よっしゃぁ!最強のプロットができたぞ!」
隣で座っていた君が突然、高らかにガッツポーズを掲げた。
「またそう言って、今度も完成させないんじゃないの?」
飽き性な癖に長編を書こうとする君に、私は呆れのため息をこぼす。
「いーや完成させる!これなら俺は輝けるぜ!」
「はいはい、そーですか」
呆れながら本に向かう私に構わず、君は話を続ける。
「お前も小説書けばいいのに。面白いぞ」
「私は読むほうが好きなの。……だから、完成したら私が読んであげる」
私がそう言うと、君は朗らかな笑顔を見せた。
私は、その表情が忘れられなかった。
それから数年後。私は新人賞に応募し、大賞に輝いた。
「君の『最強のプロット』、私の好きな作風だったね」
写真の中の君に話しかける。
「でも私は『君の文字』で書いた、あのお話が読んでみたかったな」
私が、次作で「難病系恋愛小説」を発表したのは、また別のお話。
青春
公開:22/04/21 15:07

一色

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