永遠のコーヒー

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「そのカップ、汚いよ。なんでそんなもの放置しておくの」
そう言われると男は、物憂げな表情をした。
「いつか、片付けるよ」
テーブルの上に、ポツンと置いてあるコーヒーカップ。中身も入っているようで、黒い液体の上に抹茶色の島が浮かんでいた。
「その『いつか』っていつなのよ」
「いつかはいつかだよ」
「すぐに片付けてほしいんだけど」
「いや、だって」
「邪魔なの」
男は言い返せなくなると、ひとつ深呼吸をした。
「いいか、このコーヒーは本当に大切なものなんだ。」
男は続けざまに話しだした。
「恋人だった。俺がこのコーヒーを淹れて、あの人はいつも通りに飲むかと思ったら、『じゃあ、またね』とだけ言って、ここから出ていった。それから何日経っても、今もまだ帰ってこないんだ」
「それで、その時のままコーヒーを残して置くわけ?その人が戻ってくるまで、永遠に?」
女は、涙を浮かべた。
「今は私がいるのに」
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公開:22/04/23 10:29

檸檬koY

読んでいただき、ありがとうございます。
少しでも上達出来るように頑張ります。
「小説家になろう」でも同名で活動しています。よろしくお願い致します。

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