磁力人間

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磁力の強い山に登ってから、おれの周辺で妙なことが起こるようになった。
朝起きると、キッチンに置いてあるフライパンがカタカタ揺れて、おれのほうに向かって移動しようとする。最初は気にしていなかったが、日に日にその動きは激しくなり、ポルターガイスト現象ではないかと気持ち悪くなってきた。しかも、そのような異変はキッチンに限らず、おれが通りかかると、あちらこちらで起こるようになった。
そこで、いろいろ調べるうちに事情がわかってきた。どうも鉄を含んだ物がおれの身体に反応するようだ。試しにフライパンを身体につけてみると、ピッタリはりついて離れない。
ある突然の雨の日、雨宿りしていた木に雷が落ちた。おれの命に別条はなかったが、身体にさらなる変化が生じ、常に電気が流れるようになった。そして、おれの身体が磁石から電磁石、超電導磁石へと進化した。
最近はリニアモーターカーのように超高速で走れるようになっている。
SF
公開:22/04/23 07:05
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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