失恋制服

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もう制服を着る事もないだろう。
私は涙を流しながら、そっとタンスの奥に制服を片付けた。

その制服は、憧れの先輩の制服だった。中学を卒業する時、先輩に第一ボタンを下さいと言ったが、すでに先輩のボタンは全てなくなっていた。すると優しい先輩は「じゃあこれあげるよ」と言って、自分の着ていた制服を私にくれたのだった。私はそれが嬉しくて先輩のくれた制服を時々、部屋で着てみたりしていた。でも先輩に彼女がいた事を先日知ってしまい、ショックを受けた。同じ高校に通って先輩に告白すると決めていたのに、その夢は叶わなくなってしまった。

「別れればいいのに……」

部屋の中で独り言を呟く。自分は本当に嫌な女だと思う。先輩の幸せを素直に喜ぶべきなのに。でも素直に喜べない。私は人間ができていないんだと思う。いっその事、先輩の制服を捨ててしまおうか。そんな事を考えたが捨てる事も出来ない。失恋制服は厄介だ。
公開:22/04/22 19:38

富本アキユ( 日本 )

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・作詞を担当
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・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

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