かえりみち

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かえりみちを急いでいた。暗い街灯の下で息苦しいほどの花の匂い。何枚も大きなぶ厚い舌のような花弁が重なって舗道に落ちている。目の前に広い葉がいちまいぶらりと降りてきた。顔を拭くようにざっと撫でるとすぐにとんでいった。花粉がとんでいる。
交差点で信号を待っていると、どこからきたのか知らない男がぬうっと顔を出す。男はにたにた笑いながら気分が悪いのかと問いかける。花粉のせいか喉が痛い。気分は良くはないが、男に応えるつもりはない。じろりと見返してやると男は信号が青に変わるとすたすたと歩いていった。男の後ろを歩く。
会社でいつものように退屈な時間をやり過ごし、適度に冗談を言い、適度に上司から叱責された一日だった。信号を渡ると並木にがりがりと音がする。よくみるとヤドカリに似た甲殻類が幹に貼りついている。がりがりと音を立てるたびに背筋に冷気が走った。明日までにプレゼン資料を完成しなくては。
その他
公開:22/04/19 16:38

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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