繋がる

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 退屈な日々。
唯一の楽しみといえば
窓辺で大雪の山々を眺め
珈琲を挽いて飲むこと。
自分ではしっかりしているとは思いたいが
家族からは恍惚の人と認知されている。
確かに記憶が所々途切れる。

ピンポン~、ピンポン~

「隆じゃないか?
何十年振りだ?
それにしても変わらないなぁ。
そこに座ってくれ、珈琲煎れるから。
これは俺のお気に入りの珈琲亭ちろるの豆さ。」

俺は今の境遇を尋ねたり、
昔の思い出を語りかけたり。
だが隆は静かに珈琲カップを眺めているだけ。
「珈琲嫌いか?」
そりゃ若い頃珈琲なんて飲まなかったよな。
でもなんで突然隆が訪ねてきたんだ。
なんで今住んでいる場所を知っているんだ。
もう何十年も連絡を取っていないのに。

すると隆はテーブルにキーを置いた。
俺が貸した車のキーを。

全ては繋がった。
隆は30年前に事故死していたことが。

部屋には珈琲の香りだけが佇んでいた。
その他
公開:22/04/19 10:32
更新:22/04/19 11:48

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