カフェ・バレンティナ 後編

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入ってきた金髪の女性。その面影は決して忘れる事はない。彼女はバレンティナだった。
「バレンティナなのか?」
「なんだか照れるわね。私と同じ名前の店だなんて。ねえ。マスター、ウインナーコーヒーを貰える?」
「ああ……」
カウンター席に座った彼女の前に、淹れたてのウインナーコーヒーを置いた。彼女はカップを手に取り、そっと口へ運んだ。
「美味しい。良い雰囲気の店ね」
「ありがとう」
「あなた変わったわね。良い時間を過ごしてきたみたいね」
「君も前より綺麗になった」
「ありがとう」
カップを持つ彼女の左手の薬指に指輪がある事に気づいた。
「あっ……」
「私、結婚したの。今は子供もいるの」
「そうか……。もう八年か」
「ウインナーコーヒー、もう一杯貰える?あなたにご馳走するわ」
ウインナーコーヒーの味は、まるで僕とバレンティナが歩んできた時間を表すかのように甘さとほろ苦さが残る人生の味だった。
公開:22/04/20 22:10

富本アキユ( 日本 )

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・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
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・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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ブラウン・シュガー
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