招き三毛猫

ある日、家にセールスパーソンがやってきた。その人はケースの中から、布に包まれた握り拳ほどの大きさの何かを取り出した。
「この招き三毛猫なんですが」
布を取り、白、黒、茶の猫の置物を私に渡した。
「招き三毛猫？」
「これを玄関に飾れば、3日に1日のペースであなたは幸せになれますよ。白が幸福、黒は不幸、茶は何にも起こらない退屈な日常を表しています。ランダムでそのどれかがやってくるのです。3日に1日というのはあくまで平均ですので、幸福な日が2日続くこともあります」
「幸福とか不幸とか、一体どんな？」
「よく聞く話だと、資格試験の日の調子が絶好調だったとか、図書室で好きな子と手と手がぶつかったとか、運命の人に出会ってそのまま結婚したなんてのもあります。不幸で言えば、タンスの角に小指をぶつけたとか交通事故に遭って死にかけたなんて人もいましたね」
「いくら？」
「1体5000円ですが、いかがでしょう」