私だけのキッチン

料理は、飽くなき探求心のもと極められるべきである。

新しく就職してきた見習いに私はそう言い放つ。
この言葉は、つい最近この世を去った私の恩師が遺した言葉だ。
生前彼と親しかった私は今現在、彼の後を継いで料理長をしている。
見習いは感心した様な面立ちで、メモを取る。
この魔法の言葉のおかげで、私は料理の世界に打ち込むことができた。
私の行き場のない欲求が満たされるのは、いつもこのキッチンだけだった。
私は、自らの料理論を一通り見習いに語った。
見習いははっきりとした反応を見せなかったが、最後までその場を動くことなく私の話を聞いてくれた。
恩師の言葉は正しかった。
私の欲求は、料理でこそ満たされるべきだと、あの時ようやく理解した。
そして彼は、私の探求心を満たす手伝いもしてくれた。
彼と仲間たちに感謝を示しつつ、今日も私はナイフを振るう。

料理は、飽くなき探求心のもと極められるべきである。