私達の向日葵畑

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それは、私が駆け出しの絵本作家として活動していた時のこと。

お風呂から上がって寝室に向かうと、嫁が娘に私が書いた絵本を読み聞かせていた。
嫁の優しい声が静かな寝室にふんわりと広がる。
「すると、小鳥さんは大きく羽ばたきました…あっ、パパ」
嫁が私に気付くと、今にも眠りそうなほど目を細めていた娘がベッドから飛び出てきた。
「パパーー!」
お腹の辺りへ突進してくる娘を、私はするりと受け止めた。
「ママにお話読んでもらってたのか。えらいぞ」
「うん!」
満面の笑みが私を迎え入れる。
まるで向日葵のような笑顔だ。
「あのねあのね、あのお話ってパパのお話なの?」
「うん、そうだよ。よくわかったね」
そう答えると娘はより一層表情を輝かせて、
「そうなんだ!じゃあパパもお空を飛べるの!?すごーい!」
と言った。

私と嫁は思わず顔を合わせて、向日葵のように笑った。
その他
公開:22/04/19 21:06

一色

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