誰にも語られる事のない英雄の話

「空が泣いているね。終わりが近づいているよ。もうじき空が真っ二つに割れる。そして時空の狭間に全ての生きとし生ける者は飲み込まれていくだろう。世界の終わり。君は最後に何を望む？泣いているだけでいいのか？人の迷惑も顧みず、わがままに振る舞うかい？さあどうする？君の答えを聞かせてくれよ」

「僕は……。最後まで抗おうと思います。皆が助かる道を探そうと思います」

「なるほど。それも一つの答えか。ならもう一つだけ聞こう。君が犠牲になったら世界が救われる。そんな選択肢があったらどうする？そして君が犠牲になった事は誰も知らない。君は誰にも感謝される事もなく死ぬ。どうする？」

「僕は……。それなら喜んで犠牲になります」

「美しい自己犠牲だ。良いだろう。この聖剣を天に向かって投げなさい。そうすれば君は死んで、代わりに世界は救われる」

少年は剣を天に向けて投げた。これが誰にも語られる事のない英雄の話。