鼻腔尾行

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俺は、人よりも匂いに敏感だ。人が通った後に残り香を感じることがあるが、私の場合、人が去って5分くらいはその匂いを感じることができるのだ。医者からは特殊な鼻腔をしていると言われたことがある。
今日こそ現場をおさえてやる。今朝、同棲中の彼女がいつも以上に化粧に気合を入れて友達と会ってくると言って外出した。4、5分離れたところからの追跡だから尾行に気づかれることはまずない。俺は彼女の残り香を頼りに、彼女の後をつけた。
この辺りで匂いが途切れている。カフェだ。外から店内にいる彼女と、彼女の前に座る見たことのないイケメンがいるのが見えた。
「おぉ、どうした」
突然後ろから声をかけられた。友人だ。彼もまた特殊な鼻腔の持ち主だ。
「ちょっと尾行を」
「奇遇だな。俺もだ。最近彼女の様子が変で。ほら、カフェの中にいるのが俺の彼女。ん?誰だあのイケメンは」
俺たちは同じ人を尾行していたと知り、血の気が引いた。
その他
公開:22/04/14 17:00
尾行 鼻腔 浮気 ブラックジョーク

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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