言葉のキャッチボール

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「言葉のキャッチボール」を発明してから2年が経つ。
野球ボールよりやや小さくゴムボールほどの硬さのこの道具は、自分の感情の強弱に比例して自動的に話しかけた対象の相手に向かっていくように設計されている。
会社の最終面接で熱い思いを語った際に、飛んでいったボールの勢いに面接官が心を打たれ内定を勝ち取った大学生の話を最近耳にした。
そんなある日、家から出ると20代中頃の男性が目を充血させてこちらに近づいてきた。
「これのせいでプロポーズを断られた。」
男は「言葉のキャッチボール」を握りしめながら怒鳴り始める。
話を聞いたところ、婚約者にプロポーズした際に「言葉のキャッチボール」がゆっくり飛んでいったことが原因で彼女さんにフラれてしまったらしい。
気の毒な話だが、どうやら故障はしてないみたいだな。
唸るようにこちらに向かってくるボールを見ながらそんなことを考えた。
その他
公開:22/04/13 22:48

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