田舎町のクリーニング店

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「はい、いらっしゃい」
「あの、初めて来るんですけど、ここ、クリーニング店ですよね」
「そうじゃ」
出迎えてくれたのは80代くらいのおじいさん。こっちに引っ越してきてスーツをクリーニングに出したかったのでやってきた。
「このスーツ、お願いします」
「あいよ」
おじいさんは棚からファイルを取り出し、「衣類」と書かれたインデックスに指をかけた。
「クリーニングはスーツだけかい?」
「はい」
答えながらふと視線をファイルに落とすと「記憶」や「罪」と書かれたインデックスがあることに気づいた。
「あの、これは?」
「ここは過去の嫌な記憶や犯した罪もクリーニング、つまり、なかったことにできるのじゃ。奥の部屋で特殊な機械を使ってな。そこで取れた『汚れ』は処理場まで流され、3日後に綺麗な雨となってこの町に降るんじゃよ」
私はスーツ分の料金を払って店を出た。
ぽつり、と空から雨が降ってきた。
その他
公開:22/04/15 17:00
クリーニング 田舎

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。年齢約20代。まだまだこれからの男です。
noteでもショートショート書いてます。
よろしくお願いします。

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