呪いの椅子

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「俺、呪われてる」
 学校の帰り道、春樹がぽつりと言った。
「呪われてる?」
「自転車が壊れてバス通学にしたろ? そのバス停の椅子に座ったら、野良猫に激しく威嚇されて、帰ったらシロにも吠えられるわで」
「それが呪い?」
「母さんに制服が汚いって怒られてさ。全部、バスに乗るようになってからなんだよ」
「今日もバス乗るよな? 俺も行く」
「マジで?」
「そのつもりで話したんだろ?」
 バス停は高校近くの本屋の前にあった。
「この椅子に座ってたらさ、あっ」
 キジトラ猫がどこからともなく現れ、春樹に向かって牙を剥いた。
「ほら!」
「あのさ。そこ、猫専用らしいぜ?」
「え」
 春樹が立ち上がると、猫が椅子に飛び乗った。
「座布団にトラって書いてあるだろ?」
 尻尾を振る猫の首輪にもトラと書いてあった。
「制服の汚れって」
「トラの毛か」
 トラは春樹を一瞥してフンとそっぽを向いた。
青春
公開:22/04/14 21:27
4月14日 椅子の日 バス停 呪い

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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